*+。会いたい。+*

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「…ま、前川さん…?」 なんだか、朗らかな雰囲気の彼女が一変した。 私達の視線が一斉に前川さんに集中する。 「…大丈夫か?」 珍しく…って言っても、会って間もないんだけど、他人を初めて気にした望月さん。 「……あ、ああ。ごめんなさい。つい…」 前川さんは、ふう…と小さく息を吐き、眉を寄せて申し訳なさそうに謝った。 前川さんは、過去に双子の人と何かあったのかな…? そんなに嫌うなんて……すごく嫌なことがあったのかな…。 「美里?何かあったの?」 由衣が心配そうに、前川さんに聞くと、前川さんはコクリと首を頷かせた。 「…昔、双子の人と付き合ったことがあるんだけど……。あたし、遊ばれてたの」 前川さんが悲しそうに紡ぐ言葉に、私は何故かズキン…と胸が痛んだ。 「うわー、そうなんだ」 「それは、嫌な思い出だよなー」 沢木さん、木本さんがそう言って、共感する。 私は、共感したくても…出来なかった。 同じ双子だからかな…? どうやって遊ばれたの? と聞きたくなった。 そう簡単に「あ、そうなんだ。可哀想に」なんて言えない。 曖昧な言葉で、自分と同じ視線を浴びて、自分と同じように育ってきたであろう人を「酷い」や「最低」の一言で見捨てたくない。 「……っ…」 聞きたい。 でも…、聞けない。 そう簡単に、人の傷口を抉っていいものなのか分からなくなる。  
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