*+。早乙女くん。+*

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「え?」 あまりの早乙女くんの予想外の言葉に、呆気にとられてしまった。 「大学のみんながそう言ってる。正直、それを自分で見たから…確信は本当はある」 早乙女くんがボーっと遠くを見ながら呟く。 確信って…なに? 「“それ”を見たって…何を…見たの…?」 聞きたくない。 でも、聞かないと…。 少しの希望が見えるように、ちゃんと聞かないといけない。 「……キス、してたよ」 そう……なんだ。 いや、でも…まだそれじゃあ…。 「ど、どっちからしたの!?」 もしかしたら、一方的に佐山さんがした可能性がある…! それだったら、彰弥くんの気持ちは関係ない! 私の願いを込めて、問いかけた言葉は… 「しょーちゃんの方から、だよ」 「……そ……」 一瞬で砕かれてしまった。 私の中で芽生えた希望の芽が、一気に萎れていった。 一瞬で、芽が消えていく。 なんで…? どうして……? そんな言葉が頭の中を浮かぶ前に、頭の中を占めているのは、彰弥くんと佐山さんのキス姿だった。 見たこともない、その場面が……よく分からないくらい頭の中に貼り付けられて…。 気持ちがどんどん沈んでいく。 私はもう一度早乙女くんを見た。 嘘だと言って欲しい。 そう望んで見つめた先の彼は、真っすぐな瞳を私に向けていた。  
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