*+。会いたい。+*

30/44
前へ
/430ページ
次へ
「遊ばれてたって、どんな感じ?どんな風に」 意外とこの話に食いついた望月さん。優しくもなく、かといって冷たくもなく…ただ普通に興味があるみたいだ。 私は、心の中で望月さんにお礼を言い、前川さんの言葉を待った。 前川さんは、俯いて呼吸を整えながら、口を開いた。 「中学生の頃…趣味が合う男子がいてね…仲良かったの。 で、彼と居たら会話も弾むし、楽しかった。 だから、あたしから中庭に呼び出して告白……したの」 前川さんは頬を赤らめた。 周りのみんなが「おおっ!」とはやし立てる中、前川さんは言葉を紡いだ。 「…それで、オーケーもらって…付き合うことが出来た。嬉しかった。あたし、本当に大好きだったから」 ここまで聞いたら、青春時代の甘酸っぱい思い出だ。 羨ましいくらい中学生日記を堪能してるよ。 「…でも、あたし…騙されてた。彼の優しい言葉も、丁寧な口調も…っ、あたしに向けられた笑顔も…っ! 全部…っ!嘘だった!」 前川さんは再度テーブルをバンッと叩いた。 テーブルに乗っている小皿や箸が多少揺れる。 前川さん…酔ってないよね? 前川さんを見ると、顔が微かに赤い。 若干、酔ってる…? 「前川さん、大丈夫?水飲む?」 沢木さんが、前川さんに怯えながら水を勧めた。 前川さんは、沢木さんに「結構です!」と語尾を強くし、水を押し返した。 「ま、前川さん…本当に大丈夫なの?」 心配して声をかけると、前川さんはヘラッと笑った。 「だいじょーぶだいじょーぶ! で、聞いて聞いて! 話しの途中よ。 でねー、長い間付き合っててー、クリスマスになって一緒に過ごしたんだけどー、帰り際にね、振られたのー。 俺は双子の弟だよって。あたしと付き合ってるのはお兄さんの方。 でも、クリスマス…1日中過ごしたのは…あたしと過ごしていたのは…弟の方だった」  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加