*+。早乙女くん。+*

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「浮気って……キス以外に何するのかな…?」 しょんぼりすることを知りながら、やっぱり気になって聞いてしまう。 早乙女くんは変な顔をして、首を傾げた。 「他にすることって、言ったら……」 そう言って、しばらく沈黙した後、微かに唇の両端を上げる。 「知りたい…?」 にっこり笑う早乙女くんに、首を傾げ、「うん」と頷いた。 「じゃあ、教えてあげるよ」 「え?」 そう言われ、コツンと額を私の額にぶつけてきた。 早乙女くんは一体…? 何を?、と聞こうとしたら、「蓮華ー」と今は会いたくない人の声が遠くから聞こえた。 パタパタとスリッパを走らせ、近付いてくる音が聞こえる。 ど、どうしよう。 彰弥くんが来る…。 顔、ちゃんと見れないし…それに今は、上手く話せる自信がないよ。 彰弥くんの顔が見えないように下を向いていると、腕をグイッと横から引っ張られた。 「わ…!!?」 引っ張られた先には、あったかい手。 そういえば、彰弥くんの手…あったかくて大きいんだよね。 一緒にいると、幸せに…。 彰弥くんの笑った顔が、俯いていた私の脳裏を掠めた。 「一緒に来て…!!」 その声を聞いた瞬間、彰弥くんの笑顔が霧となり、脳裏から消える。 身体が引っ張られる。 反射で、私は足を動かしていた。 顔を上げ、私の手を引っ張って走っている人を見た。 こっちに向かってきている彰弥くんから徐々に遠ざかる。 私の手を握ってくれているのは彰弥くんじゃない。 早乙女くんだ。  
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