*+。早乙女くん。+*

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「早乙女くんも大変だね…」 「え?なにが?」 お互い俯いて沈黙を続けていたが、それを破ったのは私だった。 早乙女くんのキョトンとした表情を見つめ、再度口を開く。 「…だって、佐山さんと彰弥くんのそんな………そんな場面見たら……。私だったら、2人の間に居づらくなっちゃうよ…」 2人共、友達なのに。 知らない間にその2人の距離が縮まって、自分だけ弾き出されたことがある。 早乙女くんの今の気持ちが痛いくらい…私には理解できる。 「…ふふ、彼女さんは優しいね」 早乙女くんが意味深に、困ったように笑う。 「え?」 「だって、自分の心配しなきゃいけないのに、俺の心配してくれるんだもんっ。 びっくりだよ」 「そ、そんなことないよ…!私はただ自分のことを考えたくないだけ。 考えたら、マイナスなことしか頭に浮かばないんだ」 考えれば考えるほど結果は見えないくせに、嫌なことばかりが頭を過ぎる。 あまり考えたくない。 そんなことを思っていると、徐々に私の顔に何かが近付いてきた。 隣りを見ると、早乙女くんの顔。 さっきから早乙女くんは何をしたいんだろう? 「さ、早乙女くん?近くないかな?」 「ん?」 そう言って、誤魔化すように早乙女くんが顔を近付けてくるから、逃げ場がなく、私は床に倒れ込んだ。 その方が、失敗した。 に、逃げ場が本当にない…! いつの間にか両手をがっちり掴まれてるし…! 「…じゃあさ、慰めてあげよっか」 う、嘘でしょ…。  
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