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「…彰弥くんは、そんなことしないよ。絶対」
私は早乙女くんの目を真っすぐに見て、言い返した。
すると、早乙女くんは何度か瞬きをし、「…仕方ないなぁ」と言って呆れたように笑う。
「そんなに信じられない?まあ、普通信じたくないだろうけどね。
…でも、本当のことを受け止めるのは大事なことだから、可哀想だけど…分かって欲しい」
早乙女くんはそう言うと、すぐに携帯を取り出した。
私の腕を片手で掴んで、手際良くもう片方の手で、誰かに電話をかけている。
「…何してるの?」
聞いてみると、「しぃっ」と静かにして欲しいという仕草をされた。
「………………あ、佐山?俺だけど。あのさ、少し前のことなんだけど、佐山としょーちゃんって…その…キスしたこと、あるよな?」
佐山さんに確認の電話だったんだ。
やめてよ。
そう簡単に聞かないで。
いや、でも…私は彰弥くんを信じてるから。
目の前で聞かれても大丈夫。
彰弥くんがそんなことするはずがない。
授業の為だからって、そんなこと出来るわけがないんだ。
彰弥くんを信じる、と意を固めると、早乙女くんが携帯をスピーカーモードにしたのか、私にまで佐山さんの声が聞こえる。
『……………いま、二階堂さんはいないの?』
「うん、いない」
『そう、なら良かったわ。
ええ、霧山くんとしたけど…」
その言葉を聞いた瞬間、一気に佐山さんの声が聞こえなくなった。
嘘…でしょ…―。
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