*+。早乙女くん。+*

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『そのこと、二階堂さんに言っちゃ駄目よ?落ち込んじゃうから…』 「はいはーい」 『っていうか、早乙女くんはどこにいるのよ? 霧山くんも、あっちこっち探し回ってるんだけど』 少しイラッとしたように佐山さんが声をあげる。 「あー、ごめんね。今、佐山はどこにいるの?」 『あたしは動いてない。卓球場の近くのソファに座ってる』 「分かった。じゃあ、後で行くから」 佐山さんと早乙女くんの淡々とした会話を、私は呆然と聞き流していた。 だって、彰弥くんが…そんなわけない。 って思っていたのに……。 「ほら、ね」 電話を終えた早乙女くんが、少し自慢気に笑う。 「…………」 私は早乙女くんの言葉に同調する気も無くて…かと言って、責め立てる言葉も浮かび上がらない。 それに佐山さんと彰弥くんがキスしたことについては、早乙女くんは全く悪くない。 「俺も見た時は、すごいショックだったよ。でも……しょーちゃん格好いいし、佐山は綺麗だし…仕方ないかな…って思ったんだ」 そ、そうだよね。 早乙女くんも私と同じ、ショックを受けたんだよね。 「だから…、少しだけ。佐山としょーちゃんの気持ち、理解出来るようにしようよ」 そう言って、早乙女くんにグイッと腕を引っ張られ、上に覆い被さられる。 早乙女くんの言ってることを頭の中で何回も繰り返したけど、正直よく分からない。 なんでわざわざそんな気持ちを……理解したくもない気持ちを味わわなければいけないのだろう。 そんなことをムッと表情に出しながら考えていると早乙女くんの顔がさっきみたいに異常に近くなってきている。 あ、あれ…―? もしかして、また私危ない状況になってる…!?  
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