*+。早乙女くん。+*

13/16
前へ
/430ページ
次へ
あまりこの至近距離で話したくはないけれど……。 「……さ、さおと…めくん…?」 遠慮がちに声をかけると、何故かボーっとしていた早乙女くんはハッとした表情になる。 「あ…これは…」 早乙女くんは、何故かすごく動揺しているみたいで、私から離れ、片手で涙を拭った。 「……ごめっ…なんで…泣いちゃって……」 女の子さながら、早乙女くんはそう言い出すと、ボロボロと涙を流し始めた。 「え?あの…、大丈夫…?」 さっき自分がされたことに怯えるより、今目の前で泣いてる人を泣き止ませなきゃ…と思ってしまう。 「……キ、キス……無理だ…」 「え?」 「や、やっぱ…ムリ…っ……キスなんか…出来ないよ……っ…し、しかも…こんなの…とっ…」 悪かったね、こんなので。 私とキスするのが嫌だったのに、なんで自らあんなことをしたんだろう…? 「…大丈夫…?」 既に向き合ってお互いキチンと座布団に座ってる私達。 とりあえず、大丈夫としか聞けなかった。 「……だ、だいじょ…ぶなわけないだろぉ…!!ぜ、ぜーんぶ…お前のせいだ…っ…うぅ…っ」 私の心配した言葉が災いなのか、早乙女くんはまた泣いちゃうし…。 泣きたいのは私の方なのに……。 なんで私のせい…? 早乙女くんは何が目的だったんだろう…? 目の前で、綺麗な涙を流している小柄な青年を再度見つめた。 ……考えた結果、ひとつだけ分かったこと。 泣き出すほど、私とキスはしたくないらしい。 ……私も泣き出したい。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加