*+。会いたい。+*

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前川さんの言葉に、…何も言えなかった。 みんなもそうみたいで、一瞬静寂が私たちの中を駆け巡った。 「…酷いよね。あたし、本当に好きで…仕方なかったのに。騙されてたなんて…。 しかも、クリスマスだけじゃなくて……告白した時も……来たのは弟だったの。 ここまで聞いたら…あたしバカだよね…。なんで気付かなかったんだろ…」 「それは酷いな。最低だ」 「そんな奴忘れた方がいいよ。美里は可愛いんだから、他にいっぱいいるじゃん」 沢木さん、由衣が前川さんを慰めるように言った。 私も……酷いって思うよ。 酷いし、人の気持ちを考えてないと思う。 私も、許せない。もし私が前川さんの立場だったら、私もずっと引きずってると思う。 だけど… 「…その人たちは、寂しかったんじゃないかな」 誰に言うわけでもなく、ぽつりと言葉を漏らした。 「…寂しい?」 前川さんは、いつの間にか涙を流していたのか、涙を拭いながら私の言葉を反復する。 「…うん。その2人は入れ替わっても気付かないくらい、そっくりだったんだよね…? だから、寂しかったんだと思う…。誰にも気付いてもらえなくて…自分たちにしか分からない2人。 何をやっても、何を言っても……自分1人になれない。 必ず2人。 どちらかが悪いことをしても良いことをしても、誰も2人が…どっちがどっちだか分からない。 そして関係ないって…思われてたんだと思う。 だから、1人でも分かってくれる人を見つけたかったんじゃないかな……。 なんて、私の勝手な考えに過ぎないけど…」 私がそう言い切ると、前川さんは「…そう思えるんなら、いいわよね」と涙を拭いながら溜め息を吐いている。 うぅ…何だか申し訳ない。  
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