*+。早乙女くん。+*

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早乙女くんは大きな声で言った後、「しまった」とでも言いたげに口を塞いだ。 でも、塞ぐ前にもう聞こえちゃったわけで…。 「あ、あの…早乙女くん…。もしかして…その…」 「……っ…、そうだよ…俺は…」 言いにくそうに俯いて、早乙女くんは爪を噛んでいる。 早乙女くんの言いたいことは分かる。 きっと彼は、彰弥くんが大好きで仕方ないのだろう。 私もそうだ。 彰弥くんの傍に居て…近くに居れば居るほど好きが積もっていく。 嫌いな要素なんて、一切出てこない。 きっと、誰にでも好かれてしまう彰弥くんには、人を惹きつける力があるんだ。 「……早乙女くん?」 早乙女くんは、小さくうずくまり震えてるみたいだった。 「……きゃ、…えよ」 「え?」 小さくて、よく聞き取れない。 再度聞き返してみると、早乙女くんは真っすぐ私を見て、涙目で言い放った。 「…笑いたきゃ、笑えよ!俺は…っ…普通だ…!」 握り拳を作って、下を向いて震える早乙女くん。 普通だと言ってるわりに、かなりしどろもどろになっている。 相当……我慢していたんだろうか…? 彼は…本当に彰弥くんが大好きなんだ。 それについて、かなり悩んでいたんだろう。 すごく苦しかったんだろう…。  
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