*+。ボク、オレ。+*

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毎日が暑いし、授業は面倒くさいしで、怠かったけど…ついに待ち遠しい日になった。 月曜日だ。 バイトを終えた僕は、真夏の暑い夜に風がない道を走った。 走って、走って、走って……あの人は来てるんだろうか、と胸を高鳴らせて走った。 バス停が見えるところまで行くと、あの人は既に立っていて、顔中が綻ぶのが分かる。 一週間がこんなに長いと感じたことがない。 走って、あの人の隣りに距離を置いて立つ。 『こんばんは』 僕が着くと、柔らかく笑いかけてくれる。 『こ、こんにちは…』 『今日はバス早く来るかな?』 『どうでしょうね!今日は来ると良いッスね!』 こんな挨拶程度の会話が嬉しい。 本当は来るの遅くなればいいのに…なんて毎回願ってる。 『今日は用事があるから早く帰りたいんだよね』 『へえ、用事…。 仕事終わりなのに大変ですね』 『まぁね…。でも仕方ないよ。前からの予定だから』 用事なら、早くバスが来るように願ってあげた方がいいな。 プルルルル…― しばらく立って待っていると、どこからか携帯の鳴る音が聞こえた。 『ちょっと失礼』 あ、隣りの人からか。 大した話してもいないのに、ひとつ断りを入れて電話に出る。それが、またなんか好きだなぁ。 しみじみ思っていると、隣りの人が電話で話し出す。 『…はい、もしもし』 『ああ、その…あれだよ。うん…うん…』 内容は分からないけど、聞いてるのは申し訳ない。 まあ、距離が距離だから仕方ないけど。 『うん、はいはい。 分かったって。 大好きだから』  
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