*+。ボク、オレ。+*

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今……“大好き”って…? 何の話だ?食べ物?趣味? なに?何の話? 隣りに視線を移すと、照れたように笑っている表情が見受けられた。 『うん…その分かったから。もう言わないよ! 言うだけでも恥ずかしいんだぞ、ったく』 僕が入れない電話の相手は、この人の何なんだろう。 夏の暑さのせいか、頭の中がグラグラする…。 『分かった。ちゃんと待ってろよ。後で行くから…。ん、じゃあな』 隣りの人は電話を終えたみたいで、『バス遅いね』と困ったように笑っている。 なんだ、そういうことかよ。 最初から僕なんか見られてなくて…。 当たり前か。 見られるわけないよな。 僕は僕で…男なんだから。 『…待ってる人いるんじゃないスか?』 もう頭が働かない状態で、適当に言葉を吐き出した。 『あ、ああ。うん。…一目惚れして、すげーアピールして、やっと付き合ってくれた彼女なんだ』 『そう…なんですか』 『うん。キミのカバンについてたストラップも、彼女が好きなキャラクターで欲しがってたんだよね』 楽しそうに笑う隣りの人に対し、僕は心から笑えなかった。 あの時も、この人の彼女がきっかけだったと思うと……悔しくて仕方ない。  
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