*+。ボク、オレ。+*

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結局、僕の最初の気持ちも…今のこの気持ちも……すべて隣りの人の彼女がきっかけだったんだ。 もう気持ちが……抑えられない。 『あ、あのっ…!』 今日はヤケに遅いなぁ…と道路の先を眺めているあの人の背中に、大きな声で話しかけた。 あの人は首を傾げ、こちらを振り向く。 『こ、これ!彼女さんに渡して下さい!!』 話しかけられたきっかけとなったストラップを取り外し、あの人にムリヤリ渡した。 『え!?で、でもっ、これ滅多に手に入らないやつじゃあ…!』 『いいんです!差し上げます!あと、これも!あ、これもある!これも差し上げます!』 カバンから沢山のそのキャラクターのグッズを取り出し、ムリヤリ押し付けた。 『え!?こんなに!?キミ、集めてるんじゃないの!?』 確かに、集めてた。 この人と話す話題のために。 でも、それも…もう。 『もう必要ないです!持ってても意味無くなりましたから!』 よし、笑って言ってやった。 『それは、どういう…』 『んじゃあ、バスいつまで経っても来ないんで、“俺”走って帰ります!』 『えっ、ちょっと…キミ…!!』 あの人の言葉を聞かなかったことにして、走った。 笑っていた顔は、みるみる変わり、眉が真ん中に寄って、八の字になる。 苦しくて、辛い。 でも、こんな顔をあの人に見せなくて良かった…。 『ぐ……っ…うう…』 “俺”は、男だ。 こんなことで泣くなんて、かっこわりぃもんな。  
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