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それからの俺は、自分の異変を冷静に受け止めた。
多分、俺はあの人が好きだったんだと思う。
気になって気になって、話すきっかけさえ欲しくなった。
でも、そんなの変だ。
俺は男なのに……。
そう思い始めると、自分が変な気がして仕方なくて、極力女の子を好きになるようにした。
一緒にいて楽しいって思える相手も居たし、可愛いって思える相手もいた。
でも、心にぽっかり大きな穴があいて埋まらなくて……埋めようと色んな花に手を出すけど、どれも…穴を埋めてはくれなかった。
そうやって、ぐだぐだ生きてきた。
やがて大学生になって、自分がやりたかった脚本家の道に進んだ。
別の国の人が多い中、たまたま席が近くなった女の子と男の子がいた。
女の子は、佐山 美波といって、俺が会った女子の中で一番落ち着いている。珍しく話しやすい奴。
男の子は、霧山 彰弥といって、コイツも今まで会った同じ年齢の男子の中で落ち着いている。
しかも、俺たちにまで敬語を遣うなんて驚きだ。
席がたまたま近くなった俺たちは、よくつるむようになった。
一緒にいて、この2人が一番楽だった。
他の日本人もいたけど、俺はこの2人さえいれば……
『早乙女くん。実は、結構好きなんだけど、良かったら付き合わない?』
楽なはずだった。
別に仲良くない女子の告白に心は揺れなかった。
でも…―
『いいよ。付き合おっか』
女の子を好きにならなきゃならない…そう頭の中で自分に言い聞かせて……。
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