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え………―?
『俺から…しました』
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になって、涙も止まってしまった。
「はぁ!?お前、本気で言ってんのか!?」
あの可愛かった早乙女くんはどこへ行ったのか、彰弥くんに掴みかかるように、勢いよく問いかけた。
「本気ですけど。
佐山さんは何も悪いことはしていませんよ」
と早乙女くんに伝え、
「巻き込んでしまって、すみません」
と言って佐山さんに申し訳なそうに笑いかけていた。
…うそ、でしょ…?
そんな簡単に信じられない…。
でも、早乙女くんが言ってたことは本当だったんだ。
前にも一回キスしたのなら、これは二回目?
一回目は気持ちは入ってなくても…二回目だったら…?
それが≪好き≫という意味のキスだったら…?
私は、どうすればいいの?
どうなるの…?
なんだかその場に居たくなくて…簡単に状況を受け止めたくなくて…部屋を飛び出した。
「あ!おい!」
早乙女くんの呼び止める声が聞こえたけど、振り向きたくない。
戻りたくない。
その事実を受け入れたくない。
走って走って、廊下の奥の先ほど居た風景が見えるベランダに出た。
ベランダに出ると、そこから見える景色は相も変わらず綺麗で。
私の心は、ぐちゃぐちゃで…。
余計、涙が出てきた。
彰弥くんが触れたいと思うのは、私だけじゃないんだね。
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