*+。良かったねって。+*

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人の言葉で言われたんなら、絶対に彰弥くんを信じるけど。 自分の目で見たさっきの姿は、明らかに…私の気持ちを破壊するほどの力だ。 「…そうですよね。目の前であのような姿を見たら、そう思いますよね。 でも、俺は…蓮華のことだけが好きです。他の女性に目移りなんてすることありませんから。 …それだけは分かってて下さい」 いつもの優しい穏やかな声。 じゃあ、なんで…? なんであんなことしてたの? 他に理由があったの? 微かな希望を覗かせて、後ろをゆっくり振り向いた。 「彰弥…くん…?」 後ろには、すでに彰弥くんは居なかった。 「……うぅ…っ………しょう…びゃぐ…」 いない。 なんで、居なくなっちゃうの…? なんでこうも…すれ違っちゃうの…? 駄目だ。 私、このままじゃ彰弥くんと仲悪くなっちゃう。 追いかけないと…。 彰弥くんが言う大切な話…聞かないと…! 「彰弥く…っ」 もういないけど、名前を呼んで彰弥くんの後を追おうとドアを開け、廊下に出た。 どっちに曲がったか分からないけど、とりあえず左に…! 走って、曲がり角を曲がると、何かに身体がぶつかる。 がっしりとした何かにぶつかり倒れそうになった。 尻餅ついちゃう…! 目先に迫る痛みに目を思いっきり瞑った。 けど、いつまで経っても衝撃は来ず…。 「……?」 おかしいな、と思って目を開いた。 開いた先には、私が追っていた相手が居た。 「彰弥くん…?」 「危ないですね。道を曲がるときは、確認しないと」 誰のおかげで走っていたと思っているんだ…。 というより、彰弥くんの顔がやけに近い。 しかも、私の身体が斜めになっている…。 な、なんで…? ドキドキして首をぶんぶんと左右に振っていると、自分の背中にある腕に気が付いた。 …そっか私、背中を支えられて尻餅つかずに済んだんだ。 「……う…わぁ…」 緊張して、声が震えた。 彰弥くんはクールな表情で、身体を起こしてくれた。 「あ、ありがとう…」 「驚かさないで下さいよ。蓮華に飲み物を買ってきたら、急に飛び出してくるんですからビックリしましたよ」 え…? な、なんだ。 彰弥くん、どっか行っちゃうかと思ったけど…私の早とちりだったんだ…。  
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