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「ご…ごめんなさい…!あ、たし…本当に霧山くんにもアナタにも…申し訳ないことを…。申し訳ないじゃすまされないわね…。本当に…ごめんなさい…っ」
涙をいまだボロボロと零す佐山さん。
私は怒るっていう気持ちよりも驚きの気持ちの方が大きかった。
好きな人のために、自分のことを犠牲に出来る佐山さんが…心からスゴイと思った。
きっと私は、彰弥くんの為に何かをしようとしたとして…私が佐山さんの状況だったらそこまで出来ない。
佐山さんのその気持ちを嘲笑うことも貶すことも、切り捨てることも出来ない。
頭を下げて謝ってくれている佐山さんに手を伸ばした。
「佐山さん…、私…ショックだったけど…そんなに怒ってないんだよ。それに今の話聞いたら、キスしてるところを見た驚きよりも、今の話の方がすごく驚いた」
そう話しかけると、佐山さんはおずおずと目線を上げ、私が差し出した手を見つめている。
「……」
「佐山さんって、すごいんだね。好きな人のために自分のこと犠牲にするんだもん。
確かに驚いたしショックだったけど…佐山さんの気持ち考えたら…私は全然平気だよ」
「…………」
「それよりも、佐山さんは大丈夫?」
笑って聞くと、佐山さんは今度は口をへの字にして、思いっきり声を上げて泣き出した。
「う…うわぁぁぁん…!!ほ、本当はぁっ…は、初めてだったから…好きな人と…っ、したかったよぉ…!!」
最初会った時は、すごく大人びて見えた佐山さんが幼い子のように大声で泣いている。
「そうだよね。やっぱり好きな人にしたかったよね…」
座り込んでしまった佐山さんの頭を、私も一緒になって座って何度も何度も撫でた。
こんなに綺麗な人なのに…好きな人に想いが届かないって…勿体ないなぁ。
きっと相手が早乙女くんじゃなかったら、誰だって佐山さんと付き合いたがるのに…。
早乙女くんじゃなくて、別の人を好きになっていたら…佐山さんもこんな苦しまなくて済むのに…。
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