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泣いているけど、徐々に落ち着いてきた佐山さんがゆっくり言葉を発する。
「…ほんとうは…あたしだって…早乙女くんに好きって言いたい…。どれだけ好きか…どれだけ見てきたか伝えたい…。でも…、興味のないものにそう言われたら…早乙女くんだって…困るでしょう…?
あたし…、早乙女くんを困らせるのだけは…絶対嫌なの…。
…嫌だったのに…、バカね。早乙女くんの好きな人にキスしちゃうなんて…。
よくよく考えたら言った通りのことしたって…喜ばれるわけないのに」
佐山さんは自分を嘲笑ったように見えた。
こんなに誰かのことを想える人なんていないのに、勿体ないなぁ。
諦めるのは勿体ないよ…。
「佐山さん…やり方は間違っていたと思うけど、一か八か早乙女くんに自分の気持ちを伝えてみたらどうかな?もしかしたら、何か変わるかもしれないよ」
そう告げると、佐山さんの頬が一気に赤く染まったように見えた。
「あ、あたしが?早乙女くんに?」
もう頭から湯気が出そうな勢いの佐山さん。
「うん」
「駄目。言って、もし困られたらどうすればいいの?
最悪の場合、嫌われたらは?
距離置かれたら…あたし耐えられない…」
早乙女くんに嫌われた場面を想像したのか顔色がみるみると悪くなる。
「でも、このままじゃ何も変わらないよ!人の気持ちだって自分で変えないと意味無いんだよ!」
珍しく強気で言ってみるけど、佐山さんは「嫌だ」と首を振る。
「伝えないと一生このままだよ。友達では居られるけど、ずっと意識もされないまま…早乙女くんが別の人と一緒になってもいいの…?」
優しく言ってみると、首を振っていた佐山さんの動きがピタリと止まった。
「それは…イヤ。だけど、無理!」
「………」
結構手強いな…。彰弥くんの友達って頑固な人多いような気がする。
ずっとこのままで良い訳がないのに、殻から出る勇気がなくてずっと閉じこもってる。
困ったなぁ。
思わず溜め息が出そうになった瞬間、後ろから「佐山」と呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、いつの間にか部屋に彰弥くんと早乙女くんが入ってきている。
いつの間に…!!?
深刻な顔をした早乙女くんが立っていて…。
「佐山、ちょっといいか?」
佐山さんを見ると…人生で最大なピンチを迎えたような顔をしていた。
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