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--佐山side――
さ、早乙女くんと二人っきり。
密室の部屋の中で…二人っきり。
…なにこの状況…。あたし、どうしたらいいの?
ていうか、霧山くん…あたしがキスしたこと絶対怒ってるわよね?
あからさまに怖い笑み浮かべてたし…。
目の前にいる早乙女くんをチラッと見ると、何故かイライラした表情を浮かべていた。
「どうしたの…?」
あまりにも眉間にシワが寄っていたから、首を傾げて聞いた。
すると早乙女くんは、わなわなと震え出す。
「どうかしたの?じゃねぇよ!
佐山!俺に何か言いたいことあるんじゃないの?」
「え……」
そんなのないよ。
早乙女くんが話したいっていうから…。
「別に無いけど…。早乙女くんこそ、あったんじゃないの?」
だから部屋に入ってきたんでしょ…?
「お前がずっと何か言いたそうな顔してるから、聞きに来た!それだけだ!
正直、俺はまだお前が彰弥にあんなことしたの許してないからな」
早乙女くんがイライラとしつつ、腕を組んで言い放つ。
「…そ、それは…」
それは早乙女くんが『したよな?』とか言うから…しなきゃいけないって思っちゃったんじゃない。
あ…、思い出すと涙出てきそう…。
グッと涙を堪えるために目をバチッと開けるように努力すると、泣きそうになったのがバレたのか、早乙女くんがフイッとあたしから視線を逸らした。
「…まぁ、理由なんて今更聞いても遅いし、もういい。
ただ俺は、何か言いたそうな顔ずっと前からしてるから聞こうと思っただけだ」
早乙女くんがそう言いながらチラチラとあたしに視線を向けては逸らしてを繰り返している。
「…うぅ…」
あたしがずっと言いたくて堪らなかったこと…?
そんなこと言っても、早乙女くんが困るだけじゃない…。
喜ばせることも出来ずに、ただただ困らせて…どんどん離れていくだけじゃない…。
あたしが言いよどんで居ると、早乙女くんが小さく溜め息を吐いた。
「もう、いい。話したくないんなら、無理に聞くこともしない」
冷たい目。
笑ってくれない顔。
真っすぐ結ばれた口。
呆れられた…?
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