*+。良かったねって。+*

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あたしが聞いた瞬間、あたしと早乙女くんの間には変な沈黙が過ぎった。 しかも、お互い固まったままで…。早乙女くんは、あたしの頭の上に手を乗せたまま固まっている。 そして数分経った頃… 「は?」 早乙女くんから間の抜けた声だけど、ようやく言葉が発せられた。 ほらね…、困るでしょ? だから言いたくなかったのに…。 早乙女くんの顔をやっぱり直視できなくて…視線は下を彷徨った。 早乙女くんは間の抜けた言葉以外、一切喋らない。 ああ、自分の単純な頭にも呆れたわ。 早乙女くんが何かしら何か反応を示してくれると期待してた。 そんなこと、出来るわけないのに。 友達だと思ってた人に、恋愛感情抱かれてたなんて知ったら…その後の結末は最悪のはず。 そんなの分かっていたはずなのに。 ついに…前から伝えたかったことを言ってしまった。 あぁ…もう無理。この場から逃げ去りたい。 目をギュッと瞑っていると、急に髪をグシャグシャにするように撫でられた。 「おい、冗談言ってる状況じゃないんだぞー。 対応に困ること言うなよ」 若干半笑いで言ってるような早乙女くんの声。 どうして…? あたし…本気で言っちゃったのに…。 なんで…そんな風に笑って誤魔化せるの? 熱い気持ちがどんどん込み上げてきた。 泣いてるの見られたって、いい。 キッと早乙女くんの顔を真っすぐに見た。 視界が少しぼやけるのは、涙が止めどなく溢れているから。 「…冗談なんかじゃない…! あたしの気持ち痛いくらいに分かってるの早乙女くんじゃない…! 流される辛さも知ってるの早乙女くんじゃない…! なのに、どうしてそんなこと言うの…!?」 好きな人に、気持ちを伝える恐怖を誰よりも知っているのは早乙女くんなのに。 なんで…そんなことを笑って言えるの…? 怒鳴りつけるように言うと、早乙女くんはあたしの頭から、ようやく手を離した。 涙で前が見えなくても、早乙女くんの顔がぼんやりとしか見えなくても…ここまで来たら引き下がれない。 早乙女くんの返事を聞けるまで、とことん待とう。 困った顔をした早乙女くんは、涙で見えないから。 あたしは、もう一歩も引かない。  
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