*+。良かったねって。+*

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またさっきと同じような沈黙…。 でも、早乙女くんの顔はさっきよりも少し滅入ったような表情をしているのは…あたしのせいじゃないと思いたい。 真っすぐに早乙女くんを見る。 あたしの気持ちに応えて欲しい。 笑って流すんじゃなくて、ちゃんとした言葉でフって欲しい。 「ごめん」 ゆっくりと早乙女くんの口から言葉が聞こえた。 それは、あたしにとっては悲しい言葉だけど、何故だか嫌な言葉だとは思えなかった。 「佐山のことは、大切な友達だと思ってて…それ以上でもそれ以下でもない。 多分、佐山は俺のこと誰よりも分かってくれてると思う。 俺がどんな奴かで、誰を好きなのかも…分かってると思う」 早乙女くんの声に、あたしは涙をゆっくり零しながら、小さく頷いた。 知ってる。 苦しいくらい、早乙女くんがどんなにまっすぐな人か どんなに真剣に友達のことを考えてくれてるか どんなに霧山くんのこと想っているのか あたしは近くでずっと見てきたんだもの。 知ってるよ。 「…うん、分かるよ」 女の子らしい可愛い声なんて一切出せなくて、しゃがれた声で言うと、早乙女くんが優しく笑ったように見えた。 「だよな。俺たち、いつも一緒に居たもんな」 「…う…っん…」 「佐山みたいに俺のこと本当に考えてくれる奴いないと思う。 しかも、お前無駄に可愛いし、無駄にモテるし…無駄に頭良いし。 こんな良い奴、逃したら一生後悔するかもしれねー。 …けど、俺は自分の気持ちに正直でいたいから。 だから、ごめん。ほかに好きな人いるんだ。 多分一生叶いそうにないと思うけど…それでも今はその人のことだけ考えて居たいんだ。 本当にごめん…!」 そう言ったと同時に思いっきり頭を下げた早乙女くん。 フラれた。 人生初告白で、初めてフラれた。 でも、心は先程までより重くは無い。 なんでだろう。 逆に軽くなった気がする。 涙もゆっくりだけど、おさまってきた。 「…うん、わかった。 ちゃんと返事してくれて、ありがとう」 霧山くんのこと大切に思う早乙女くんを、あたしが大切に思うから。 そして、いつかこうやって告白してフラれたことを二人笑って思い出す時が来ればいい。  
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