*+。良かったねって。+*

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「そっか。頑張ってね」 笑って佐山さんに答えると、彼女は今までに見せてくれなかった満面の笑みを浮かべてくれた。 佐山さんと笑い合っていると、早乙女くんがひょっこり顔を出した。 「お前もせいぜい彰弥に浮気されないように注意するんだな」 「え!?しょ、彰弥くんは絶対そんなことしないよ!」 早乙女くんにムキになって言うと、フンッと鼻を鳴らした。 「どうなるんだか、この先わかんねーぞ」 「お願いだから怖いこと言わないで!」 彰弥くんをチラッと見ると目がバチッと合った。 合った途端、優しく微笑んでくれる。 「彰弥もあんまりコイツ甘やかさない方がいいぞ。図に乗るから。 特にそんな風に笑いかけた日にはな」 え!?付き合ってるのに!? なんてツッコミたかったけど、私が言う前に彰弥くんが口を開いた。 「離れてしまった分、沢山甘やかしたいです。 俺よりも、蓮華の方が男性のお友達作ったりしてますから」 そう言って、私に微笑んできた。 え!?なんか私が遊び人みたいじゃない!?早乙女くんに誤解されると厄介なことに…。 と思っていたら、いきなり肩をガシっと掴まれた。 「おい!彰弥悲しませたら、タダじゃおかねぇからな!」 「いや、ホントじゃないです!嘘です!嘘!」 早乙女くんの迫力がすごい。 怖くて、膝を震わせながら急いで返事をした。 半泣きになりながら言うと、「…それなら、いい」とキレ気味に納得してくれた。 この可愛い顔が一気に怖くなるのを見るのは見慣れない。 「早乙女くん、今のは冗談ですけどね」 柔らかく笑って言う彰弥くん。 もうちょっと早く冗談だと言ってくれよ! 「そうだよな。彰弥だって冗談くらい言いたくなるよな」 さっきのかなり怖い顔から一変し、可愛らしい笑みを早乙女くんは彰弥くんに向けた。 …変わり身の早さに何も言えない。 「…さて、早乙女くん。もう行きましょう?そろそろココを出ないと、予定が狂うわ」 「ん?あぁ、そうだな。もうそんな時間か」 佐山さんに背中を押され、早乙女くんは旅館の玄関を出た。 「じゃあな、彰弥。向こうでまた待ってるから」 彰弥くんに手を振って言う早乙女くん。そして、私に視線を向け… 「お前も…待ってないけど、いつか遊びに来たら構ってやらねぇこともない」 不愛想にそう言ったけど、最大限の優しい言葉だと思った。  
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