*+.君のすぐ傍.+*

8/10
前へ
/430ページ
次へ
「彰弥くん…ありがとう…」 申し訳ない顔をしてお礼を言うと、「なんて顔してるんですか」と笑われた。 彰弥くんと付き合えて良かった。 普通だったら、すごい怒るもんなんじゃないのかな? 彰弥くんの貴重な時間を無駄にしてしまったわけだし、怒るよね…普通は。 でも、今…私の目の前にいる彰弥くんは…いつもの優しい笑顔を浮かべてくれる。 本当に…大好きだなぁ…。 彰弥くんをジッと見つめていると、彰弥くんの顔が徐々に近付いてきた。 「彰弥くん?」 「そんなに見つめられたら、困ります」 「しょ、彰弥くん…!あの起きたばっかり…」 だ、駄目だ!聞く耳を持ってくれない! 諦めてギュッと目を瞑り、身構えていると…ブルルルルルル…と凄まじい振動音が聞こえた。 「な、何の音…?」 音に驚き、目を開くと…彰弥くんが若干顔を顰めていた。 「すみません、俺の携帯です」 溜め息交じりにそう言い、携帯の画面を見た彰弥くんの顔は…さっきのしかめっ面とは打って変わっていた。 目が見開いていて、何とも言葉が出てこないという顔をしている。 そんなに驚くなんて…珍しいなぁ。 「どうしたの…?」 恐る恐る聞いてみると、彰弥くんが携帯を持ってガバッと立ち上がった。 「わ…っ!?」 「すみません、蓮華! 俺、行かないといけない用が出来ました! 本当に、すみません!!」 「え…」 振り向きざま私にそう告げ、颯爽と荷物をまとめて部屋を出て行った。 出て行く間際に、申し訳なさそうに深々と一礼をして…。 「え」 どういうこと? 荷物持って出て行ったってことは、もうここには戻って来ないってこと? じゃあ、私は…? 一人で帰ってってこと…? そういうこと? どういうこと? さっきまで良い雰囲気だったのに…こんな感じで帰ってしまうって…なに? 初めてのことで頭がいっぱいなんだけど…とりあえず…!! 彰弥くんは用事があって、こっちには戻れないってことなんだよね。 「じゃあ、私も一人で帰ろうっかな」 元気よく言ってみたけど、口に出してみると余計悲しくなった。 きっと…何か本当に大切な…すぐに行かないといけない用事が出来たんだよね。 だったら、しょうがないよね。 朝風呂入って帰ろう。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加