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発表会の直前で、舞台裏にいた私。
『亜紀ちゃん、変な頭だよ~』
不意に男の子から言われた言葉に小さい私は、肩を震わせた。
『そ、そんなことないもん!しばったら、誰でも可愛くなれるんだよ!』
悔しくて負けじと言い返すと、男の子は更に言ってくる。
『亜紀ちゃん変だよ!せんせー!亜紀ちゃんの頭変だよねー』
そんな男の子に、先生は苦笑いしながら返事をした。
『浩一くん、そんなこと言わないの。亜紀ちゃんも浩一くんが言ったこと気にしちゃ駄目よ』
『えぇ!だって絶対おかしいよ!』
浩一くんは、他の子たちにまで声をかけ出す。
他の子たちも『うんうん』と頷き始めて……そんなにみんなで頷いたら本当に自分が変だと思えてきて、私は…怖くなって舞台裏から走って…逃げた。
一人で駐車場まで走って、わんわん泣いた。
みんなの所に戻るのが怖くて、ひたすら泣き続けた。
でも…。
『亜紀ちゃん…!』
遠くから、いつもの声が聞こえて…ピタッと泣くのを止めた。
声がした方を向くと、やっぱりしんちゃんが居て…
『何やってるんだよ!こんなところで!
みんな心配するだろう…!?』
しんちゃんは、私よりも少しお兄さんで、その温かい手に抱きしめられただけで心が温かくなる。
『ごめん…ね…。でも、あたち…あたち…!
変だって…この頭…変だって……。こういちくんが…変って…!』
それを伝えると、また私の目から涙が溢れて。
しんちゃんが困るって分かっているのに、泣いた。
泣きながら、しんちゃんを見ると…私の頬に手を添えた。
『亜紀ちゃんは、どんな髪型でも可愛いよ。髪しばってなくても、しばってても可愛い』
『ほんと…?』
目の前に居るしんちゃんは笑っていた。
『うん。だから、もう泣かないで。泣いてる顔も可愛いけど、亜紀ちゃんは笑ってる顔が一番』
ねぇ、しんちゃん。
今も、私のこと可愛いって言ってくれる?
私のこと、一人の女の子として見てくれる?
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