*+.番外編 まっさらな憂鬱.+*

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「しんちゃん……」 朝?眩しい? ちょっと寒いかも…。 愛しい人の名前を呼んだ。 さっき見た夢の中の…昔のあだ名で。 「亜紀お嬢様、おはようございます。もう朝食は出来上がっていますよ」 目の前には、愛しい人。 使用人の晋太郎さんが、私がさっきまで使っていたお布団を畳んでいた。 「あぁ、ありがとうございます……って、私の部屋で何してるんですか!?」 枕から急いで頭を上げて突っ込むと、晋太郎さんは昔から変わらない笑顔で言ってのける。 「今日は用事があると仰っていたので、起こして差し上げようと」 「だからって、勝手に部屋に入るのは止めて…!」 どうしよう…! 寝癖がすごいわ!髪の毛があっちこっちにハネているし、顔だって涎を無意識に垂らしていて、白く顔に残っていたりしたら…! 「申し訳ございません。すぐに失礼致します」 晋太郎さんは、本当に申し訳なさそうに部屋から出て行った。 パタン…と部屋の扉を閉められた音に溜め息が出る。 こんなことが言いたいわけじゃないのに…。 でも、みっともない姿を見せてしまったわ。 …晋太郎さんが私のこと…女の子だって意識してたら…絶対にこんなことしないわよね。 そう思うと、頭ががっくりと項垂れてくる。 あぁ…朝から嫌な気持ち。 晋太郎さんに、少しでも見てもらえるように婚約を取り消してもらったんだから…頑張らないと…!! 身支度を整え、自分の部屋から出ると…ちょうど目の前には私の洗濯物を持った晋太郎さんが…!! 「亜紀お嬢様、先程は失礼致しました。洗濯物をお持ちしましたが、どちらに置いておきましょう?」 柔らかく笑う晋太郎さん。 綺麗に畳んでくれたのであろう洗濯物の中には、私の…し…し…下着まで見えている。 「い」 なんで下着まで…!!? 「いやあああぁぁぁ!!!せ、洗濯物は自分で畳みますから結構です!!」 晋太郎さんが抱えていた洗濯物を奪い取り、自分の部屋に置いた。 急いで洗濯物を片付け、部屋を出ると…晋太郎さんがしょんぼりとした顔でこちらを見ている。 「…亜紀お嬢様…最近様子が変ですが…何か俺に問題でも…?」 不安そうに言う晋太郎さん。 に、キュンとしてしまう自分が憎い。 い、今かしら…? 気持ちを伝えるんだったら、今かしら…?  
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