*+.番外編 まっさらな憂鬱.+*

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今…なの? でも、こんなタイミングで伝えるなんて…雰囲気も何も無いわよね。 …こういう機会がないと伝えられないって言うのも事実なんだけど…。 もっとこう簡単に言えたら楽なのに…いざ目の前にすると…こうも上手く言葉が出てこない…。 「あの…お嬢様…?」 晋太郎さんの不安そうな声が耳に入る。 考え込んでいたせいか、俯けている顔を上げると晋太郎さんが驚いたような顔をした。 「…すみません!何か気に障るようなことでもしてしまいましたか!?」 晋太郎さんは私の顔を見るなり、勢いよく頭を下げてきた。 その頭のつむじを見ながら、首を傾げてしまう。 あら…?なんでこんな必死に頭を下げてるのかしら…? 私、そこまで怒ったつもりは無いのだけれど…。 「あ…えっと…そんなに気にしないで。 私、怒ってなんていないから」 そう告げると、晋太郎さんは口をへの字にして、ポケットからスッと何かを取り出した。 目の前に出されたソレは、眉間にシワが寄っている不愛想な顔の私を映し出していた。 「…これでも、でしょうか?」 「…!!」 自分の顔に衝撃を受けてしまった。 なによ、これ。 私…好きな人の前でこんな顔してたの…? こんな…変な顔……。 「…ごめんなさい。私…目が疲れてるみたいで…つい…こんな顔…」 あぁ…、見せる顔がないわ…。晋太郎さんも…嫌な思いしたに違いない。 はぁ…と小さく溜め息を吐く。 「…お嬢様、そんな気を重くなさらないで下さい。 目が疲れているときは、こちらを食べるといいんですよ。 ブルーベリーの飴なんですけど、俺も目に疲れが溜まるといつもこれを舐めているんです」 晋太郎さんはさっきの不安そうな表情を笑みに変え、私にブルーベリー飴が入っているボックスを渡してくれた。 「あ、こんなに…。貴方の分がなくなってしまうわ」 ボックスの蓋を開けると、大量に丸い紫色の物体が入っていた。 「いえ…あの、俺も全部はお渡し出来ませんが。何粒かというつもりで差し上げたのですが」 私の言葉に戸惑いがちに言う晋太郎さん。 あ…、このボックスごとではなくて、何粒か取ってという意味でくれたのね。 ……………は、恥ずかしい!良いように解釈してしまった…! 卑しい子みたいに思われるじゃない!私の馬鹿!  
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