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やった…!言ったわ…!
「私、もう行くね!!じゃあね!」
晋太郎さんの顔を直視できない。
言った瞬間晋太郎さんから顔を背け、リビングに向かおうと廊下を走った。
全力疾走で。
晋太郎さんがどんどん離れていくのが分かる。
走って走って、急いでリビングに飛び込んだ。
入って、バンッと扉を勢いよく閉めて…-。
「はぁはぁ…はぁ…」
荒い息を落ち着かせた。
けど…無理。
心臓がバクバクして…さっきよりも動悸が…。
気持ちを伝えるってこんなに緊張するのね。
もし本格的に言う時は、これぐらいじゃ済まないわね…。
思えば、高校生の時から頑張ろうって決めたけど…なかなか気持ちが伝えられず…今はもう大学生…。
やっと…やっと…この時になって、少し成長したのね…。
リビングのソファにゆっくり腰を下ろすと、少し気持ちが落ち着いた。
これで…少しは進めたかしら?
その頃、廊下では…-
「あらぁ?晋太郎さん、どうかしたんですかぁ~?」
リビングに向かう途中、晋太郎に会ったのは…亜紀の双子の妹だけど性格がまったく違う麻紀。
晋太郎は壁に顔をつけ、壁と同化していた。
「……本当、困ります」
唸るような声で言う晋太郎に、麻紀は小さく首を傾げた。
「何が困るんですかぁ?」
そう聞くと、晋太郎は顔を上げ「いえ…、こちらの話です…」と弱弱しく笑みを浮かべた。
「へぇ~。じゃあ、麻紀はテレビ見に行ってきますぅ」
「はい、行ってらっしゃい」
大して興味がなさそうな麻紀に、ゆっくりそう告げ…また壁に身体の身を任せた。
「本当…可愛すぎて、困るな…」
弱ったように呟く晋太郎の言葉を聞いているものは、いなかった。
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