2795人が本棚に入れています
本棚に追加
「やらかしてしまったわ」
もう少しだけ残ろうなんて決めて、長々と残ってしまった。
図書館の出入り口で外を眺めて、溜め息が出てきてしまった。
激しい雨が降っている。
まったく気付かなかった……。
歩いてきてしまったし…傘なんて持ってきていない。
「仕方ないわ。迎えを…」
バッグの中に手を入れ、ガサガサと動かす。
「あら…?」
何回もバッグの中で手を動かしても、アレがない。
おかしいわね。
十分くらい探したけど、見つからない。
………携帯…忘れてきてしまったわ。
…きっと頭がカッとしていて、持ってくるのも忘れてしまったのだ。
これじゃあ、迎えの車が呼べないじゃない!!
腕時計を見ると、時刻は午後7時半…。
館内は閉館になっていて、もう入れないし…入り口で雨が止むまで立ってなければいけないの…!?
「あぁ…もう。本当に嫌になっちゃうわ…」
これで雷なんか鳴ったら…本当に最悪…。
なんて思っていたら、数分後…-。
ついに雷まで鳴ってしまった。
ああ、もう!!
今日は、なんていう日なの…?
とりあえず、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
スカート履いてるけど、今のこの状況で下着が見えるとか気にしてられないわ。
というより、周りに誰もいないから全然気にならない。
とりあえず、雨止んで~…。それか先に雷が止まってくれたら、気持ち的には安心なんだけれど…。
願うように空を見た。
…止みそうにないわね。
こんな日、大嫌い。
朝から嫌なことあって、良いこと起きたと思ったら…こんなことが起きる…。
顔を伏せて、考えるのは…やっぱり晋太郎さんで。
あんな可愛くないこと、言わなければ良かったなんて…。今更なこと考えては、涙が出てきそうだ。
「しんたろう…さん…」
小さくそう名前を呼べば、いつだって…優しく笑いかけてくれた。
「なんですか?お嬢様」
ほら、こうやって…。
顔を上げると、晋太郎さんの顔が見える。
「…え…?」
-…どうして?
好き過ぎて、幻覚まで見えるようになってしまったの?
今、私の目の前に…晋太郎さんがいる。
最初のコメントを投稿しよう!