*+.番外編 まっさらな憂鬱.+*

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「あ…あ…あの…」 ゆっくり顔が離れたと思ったら、バチッと晋太郎さんと目が合ってしまった。 晋太郎さんはハッとしたような顔をして、「…あ…すみません…」と今日何回目か分からない謝りの言葉を口にした。 晋太郎さんの手を掴む両手も力がなくなり、それに気付いた晋太郎さんはパッと手を離し、自分の首元をバツが悪そうな顔をして擦っている。 な、なにが…?いま、なにが…? さっきのと比べ物にならないくらい頬が熱い…。 「………………………」 あまりの予想もしなかったことに、私は何も反応できずにいた。 ボーっと今起きたことに唖然としていると、晋太郎さんがそわそわとしながら、「車、もってきます」とだけ言って、雨の中を走って行った。 少しすると、車が私の方に近付いてきて、運転席には晋太郎さんが乗っていて…何事も無いような顔で後部座席のドアを開けてくれた。 私もそれに合わせて乗り込み、車は家に向かっていった。 雨の音は遮断することは出来たけど、さっきのよく分からないことに思考を持ってかれていて、私は何も話すことが出来なかった。 それに合わせてなのか、晋太郎さんも何も話題を振ってくれなくて…車の中は静寂と無言で蔓延していた。 さっきのは…何だったの…? もしかしたら、ああいうこと…他の使用人にもしているの…? うちのメイドはみんな可愛いメンツが揃ってる…。あの子たちにもしてるのかな…? ということは、さっきの行動も慣れてるのかな…? 別に…何も考えていないでしたの……かな…? だとしたら、少し…いえ…かなり…落ち込むなぁ…。 ガックリと首が項垂れる。 きっと…そうなのよね…。 深い意味なんて、何も無かったのよね…。 もしかしたら、麻紀にまでしてるのかも…。 ああ、そうだとしたら…嫌…。 「…お嬢様」 一人で悶々としていると、ようやく名前を呼ばれた。 「…何ですか?」 少し声色が不愛想になってしまう。 こんな時も可愛くないわね、私。 「…先程のこと、すみませんでした。 …俺のこと、嫌いになりましたよね」 「……嫌いには、なりません。 だけど、他の子にも…さっきのようなこと…してるの…?」 ああ、もう!悶々して仕方ないから聞いてしまったわ!  
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