終わりの鐘は鳴っていた

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葉子のお誘いを断って、一週間。家と会社の往復を繰り返して、無情に過ぎていく日々を過ごしていた。 仕事が終わったら、毎日のようにリビングでダラダラしている。今日もそんな日だった。 「ただいまー」 椿が学校から帰ってきて、「おかえり」といつもの力のない声を出す。 「ねえ、このあいだ蓮華に貸したCD持ってきてくれない?今、友達が玄関で待ってるから、貸してあげたいんだけど」 「うーん、わかったー」 大きな伸びをして、いじっていた携帯をテーブルに置き、自分の部屋に向かった。 って、伸びしてる場合じゃなかった!早く渡さないと!! CDボックスの中を必死に探すが、数が多くてなかなか見つからない。 「ああ!椿の友達が待ってるのに!早くしないと!」 焦るな!焦ったら、余計見つかりづらいんだから! 「蓮華ー!!」 下から私を呼ぶ声が聞こえる。 うわああ!急かさないで!!今、必死に探してるんだから!呑気に伸びなんかして、ごめんなさいぃ!! 「ま、待ってー!今、持ってくからー!!」 大きな声で返事をすると、椿が階段をのぼってる音が聞こえ、更に焦る。 早く早く!見つかれー! 必死に探していくと、ようやく椿から貸してもらったCDが見つかった。 「あ、あった!」 その言葉と同時に椿が私の部屋に向かって、走ってきた。 お、怒ってる・・・!!遅すぎた! 「つ、椿、ご、ごめ・・」 「蓮華!電話!電話!早く!!」 珍しく椿が取り乱している。 手には私の携帯が握られていた。ブブー・・・っと振動が響いている。 ズイッと私に携帯を押しつけてきた椿に、少し驚きながら携帯を受け取ると ≪霧山 彰弥≫ ディスプレイには、名前が出ていた。    
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