終わりの鐘は鳴っていた

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「あ・・・」 ディスプレイを見たまま、固まってしまう。 うそ・・・。彰弥くんからだ。 彰弥くんから・・・。 「なにボケッとしてるの!?電話切れちゃうわよ!さっさと出て!」 椿が耳の中が痛くなるくらい近付き、大きな声でそう言った。 「う、うん!」 その勢いにおされ、受話ボタンを押す。 それを確認すると椿は、私の握っていたCDを持って下に降りていってしまった。 ど、どうしよう。私、一人だ。 そんな変な緊張感を持ちながらも、耳に携帯を押し当てる。 すると、ずっと聞きたかった優しい声が、私の中に響き渡った。 『もしもし?あの、彰弥です』 久し振りに聞いた声は、全然変わっていない。そりゃ、そうだ。三か月前のことだもの。経ったそんな期間なのに、どうしようもなく長く感じた。 声を聞いた瞬間、目頭が熱くなって涙が溢れてくる。 「・・・っ・・・ひ、久し振りだね」 嬉しくて声が上手く出てこない。 声を聞いただけでこんなに愛しさが込み上げてくる。 『ええ。先日は、蓮華に大変ご迷惑をおかけして・・・すみませんでした。あの後、無事に帰れましたか?』 「気にしないで!しっかり満喫して帰って来たから大丈夫だよ!」 本当に申し訳なさそうな声が聞こえて、焦って明るい声を出した。 『本当に、すみません。楽しい思い出を作りたかったんですが』 「いいって!また行けばいいよ!彰弥くんの気持ちはすごい嬉しかったし、楽しかったよ」 今度は、言葉がペラペラと早口になる。久し振りに声を聞いたから緊張しちゃっていい具合に話せない・・・。 でも、彰弥くんの声を久し振りに聞けて幸せだからいいや。 『ありがとうございます。蓮華、聞いていただきたいことがあるんですが』 「うん!なに?」 『実は・・・』  
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