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『俺の脚本が、こっちの国で注目を浴びるようになりまして!
有名なイギリスの作家さんの元で仕事を手伝うことになりなした!
先日、蓮華と居た時に鳴った電話がその電話で、急遽脚本を見たいとのことで・・・咄嗟のことで急いで戻ってしまったんです。
・・・すみません。急に置き去りにしてしまって・・・。
早く戻らないと、チャンスを逃してしまいそうで。恥ずかしいことに慌ててしまって』
申し訳なさそうに謝りながらも、その言葉は喜びに満ちていた。
そっか、彰弥くん頑張ってたんだ。
自分の夢の為に。
「・・・そうなんだ!すごいね!
有名な作家さんのところで仕事出来るって、あんまりないんじゃない!?弟子入りみたいな感じでしょ!?」
ああ、この三か月間きっと頑張っていたんだ。
『ありがとうございます!そうですね、なかなか無いことみたいで・・・とても嬉しいです。夢みたいで、本当に』
「本当に良かったね」
『ええ!ありがとうございます!!』
彰弥くんの声と共に電話の向こうから、男の人の声が聞こえる。英語みたいだから何言ってるか聞こえないけど、彰弥くんの名前を言ったのは聞き取れた。
『あ、すみません。ちょっと呼ばれてるので、これで失礼します。また、電話しますね』
「あ、うん」
私が返事した後にプツン・・・―と電話は切れた。
良かった。元気そうで。
携帯を床に落としてしまい、ゴトッと鈍い音が響く。
私はその場に立ったまま、呆然としてしまった。
なんでだろう。
何か変な気分だ・・・。
彰弥くんは、自分の夢の為に前に進んでた。
でも、私・・・
彰弥くんの嬉しそうな声が・・・なんでだろう・・・すごく、悲しく思えてくる。
私は・・・彰弥くんのことを想って、この三か月間過ごしてきた。
毎日毎日、ずっと想ってきた。
忘れることなんて、一日もなかった。
それは、彰弥くんも同じはずだ。
そう思ってた。
私のこと、一日に一回は考えてくれてるんだろうって。
思ってたのに。
涙が頬を伝う感覚がする。
「・・・そうでも、なかったんだね・・・-」
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