終わりの鐘は鳴っていた

12/17
前へ
/430ページ
次へ
雪が降る寒い季節には・・・- 『さ、さ、寒い』 『なんで雪だるま作るのに、そんな寒そうな格好してきたんですか?』 上にコートを羽織り、マフラーなしで手袋なし。靴だけはしっかり長靴装備という中途半端な格好で、空き地に雪だるまを作る計画をしていた。 主に私が計画を立てて、彰弥くんは仕方なく合わせてくれる。 彰弥くんは温かそうなファーのついたコートにマフラーを巻いて、手袋もしている。靴は普通の靴だけど。でも見ていて、あたたかそうだ。 2人で雪を地道に掬い、大きな玉にしていく。 私は素手だ。 ガクガクと震える私を見て、彰弥くんが小さく溜め息を吐いた。 『蓮華、少しこちらに来てください』 私を軽く手招きしたので、ゆっくり彰弥くんの方に行く。 『な、なに?』 もう歯がガチガチと音を立てる。 そんな私を見て、彼は笑うんだ。人が寒そうなのに、よく笑っていられるな・・・と思った瞬間、彰弥くんは自分のマフラーを私の首に巻いてくれた。 『え?』 『あと、これも』 そう言って、自分が使っていた手袋を私につけてくれる。 優しく私のかじかんだ手を触って、丁寧に。 マフラーと手袋を私につけてくれた後、彰弥くんは噴き出したように笑った。 『やっぱりマフラーも手袋も、蓮華には大きすぎましたね』 『いいよ!彰弥くんが寒くなるよ!私は大丈夫だから!』 『いえ、俺は大丈夫です。寒そうな蓮華見てる方が、寒く感じますから』 『じゃあ、私の長靴貸してあげるよ。これで物々交換になるよね!?』 『小さくて履けませんよ』 そう言って、また笑う。 『じゃあ、なにか・・・』 何か代わりにあげたい!と思っても、今の私は何も持っていない。 『なにもいりませんよ。蓮華が傍にいるだけで、俺は満足です』 『ええ!?それじゃあ駄目だよ』 『いいんです。傍にいると、あったかいですし』 両手で、ギュッと私の手を握ると、本当に・・・本当に・・・驚くほど・・- ・・・・・幸せそうに笑ってくれるんだ・・・--  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加