終わりの鐘は鳴っていた

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目を瞑ると浮かび上がる彰弥くんの顔は、ほとんど過去の顔だ。 私に差し出してくれた手は、いつも優しかった。 いつも私を支えてくれた。 でも、私は何も変わっていない。変わることを恐れて、私はいつも彰弥くんに守られてるだけだった。 涙が頬を伝う。彰弥くんへの想いは、今もここに溢れてる。 「もっと早くに気付けば・・・よかった・・・」 両頬から流れる涙を力強くゴシゴシと拭い、息を深く吐いた。 もう決めた。 戻るにも、やり直すにも・・・もう遅すぎる。 私の中の彰弥くんは、もう・・・今はいない。 私も・・・自分の思ったことを信じて、進むしかないみたい。 携帯を再度手に持ち、彰弥くんに電話をかけた。 耳に響くのは、無機質な音。その後には、機械的な女の人の声。 留守電だ。 忙しくて出られないみたいだから、一言だけ告げて電話を切った。 「・・・話したいことがあるから、時間に余裕が出来た時に電話して。お願い」 私は、間違ったことを考えてるかもしれない。 でも、これが最良の選択。 今の彰弥くんにも受け入れてもらえると思う。  
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