終わりの鐘は鳴っていた

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彰弥くんの携帯に留守電を入れてから、一週間が経とうとしていた。 焦りはあまりない。それに、気持ちを落ち着かせる準備も出来た。 のんびり待とうと心に決めた矢先のことだった。 仕事が終わり、自分の部屋でごろごろしていると、机に置かれた携帯が鳴った。 即座に立ち上がり、携帯を手に取ると・・・彰弥くんの名前が映っている。 「・・・ふぅー・・・」 少し気を落ち着かせるために深く息を吐き、受話ボタンを押した。 「もしもし」 『あ、蓮華。連絡が遅くなり、すみません。留守電聞きましたが、何か?』 ああ、久し振りに聞こえる。彰弥くんの優しい声。 柔らかく話す彼の声に、一瞬これから話す内容を言いたくなくなってしまう。 「ううん、大丈夫。彰弥くんにちょっと話したいことがあってさ。今、大丈夫なの?」 『ええ、構いませんよ。なんですか?』 嬉々として聞こうとするその声に、 「別れたいと思う」 『え?何とですか?』 「彰弥くん・・・とだよ」 悲しみを落とした。 『え?どういうことですか?』 電話越しの声が、優しい声から少し低いトーンの声になった。 「言った通りの意味。もう帰ってきても、連絡しなくていいよ」 私の声は、徐々に震えて・・・でもしっかりと伝える。 『どうして急に・・・?先日のことですか!?それは本当に申し訳ないと思っています! もうあんな真似絶対にしません。あの時は気が動転していて、本当にしてはいけないことをしてしまったと反省しています』 「それは、もう気にしていないよ」 『では、俺があまり連絡できないからですか!?でしたら、なるべく連絡できる時間を作ります・・・っ』 「違うよ」 『なら、何故・・・-!? どうしてそんなこと言うんですか・・・!?』 顔は見えないけど、声色は今まで聞いたことがないほど困っている彰弥くんの声だ。 困らせて、ごめんね。 悲しませて、ごめんね。 どうしてかな。 私は・・・彰弥くんを失くすことを恐れて、どうやら失くしてしまったみたい。 過去の彰弥くんしか見えていない。 もう、現在の彰弥くんは・・・私には見えない。 だから、さようならなんだよ。  
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