終わりの鐘は鳴っていた

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「ごめんね、彰弥くん」 もう、無機質な声で伝えないと・・・泣きそう。 『きちんと説明してくださいっ・・・! 他に好きな人が出来たんですか・・・?』 「・・・っ!!」 彰弥くんの声も震えてる。 初めてだ。こんなに大きな声で、問いかけられたのは。 「・・・違うよ。他に好きな人なんて、出来るわけないよ。 彰弥くんのこと、ちゃんと考えてるよ。いっつも考えてるよ。 だから、別れたいんだよ・・・・」 携帯をギュッとキツく握り締めた。 冷たい声をなるべく出せるように。何も感情がないような声を出せるように。 本当は、大好きで・・・好きで好きで泣きたくなるなんて・・・ばれないように。 本当は、ずっと一緒にいたいなんて・・・口を滑らせないように。 『・・・俺に理解できるように説明してください』 そう言われ、深く息を吸い込んだ。泣いたら、駄目だ。絶対泣かないようにしないと・・・。 「彰弥くんは、そっちにいる間・・・私のこと忘れるって言ったよね?」 『ええ、言いましたけど・・』 「そのこと思い出したんだ。彰弥くんは、自分の夢に向かって頑張ってる。 それは、とても良いことで・・・私もそれを望んでた。 でも、私はいつまで経っても彰弥くんのことばかり考えていて・・・それで気付いたんだ。 いつの間にか、一緒に歩いていなかった。 時が経つごとに、距離はあいて・・・もう戻れないほどに離れてた。 高校生の頃、並んでた肩は・・・もうぶつかることもないんだよ・・・」 『そんなこと・・・!また一緒に肩を並べて歩きましょう!? どんなに忙しくても毎日蓮華に絶対電話します!今は少し忙しいですが休みの日には蓮華に会いに行きますから! また並んで笑い合いたい・・・それだけで俺は幸せなんです・・っ・・』 掠れた彰弥くんの声に、一生懸命想いをぶつけてくれる言葉に・・・涙が出そうになるけど・・・口をへの字にしてグッと堪えた。 「・・・駄目だよ、もう。 私の中にいる彰弥くんと・・・・今こうやって話している彰弥くんは、違う。 もう戻れないんだよ・・・。 彰弥くんは、前に進んでる。私は止まったままで、もう私の立っている場所からは彰弥くんの背中さえ見えていない。 私も・・・進みたい・・・- だから、さようならしたい」    
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