終わりの鐘は鳴っていた

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『・・・前に進むって、他にも方法が沢山あるんじゃないですか? なんで、よりによってそんなこと考えたんですか・・・?』 私の言葉を苦しそうに噛み締めるように、彰弥くんはゆっくり問いかけてきた。 「じゃあ、もしそっちの国で彰弥くんが仕事をすることになって、本格的にそっちに住んでほしいって言われたら、どうするの?」 『そんなこと決まってるじゃないですか!蓮華が日本にいるなら、俺は帰りますよ。仕事はやろうと思えばどこでも働けます。ですが、蓮華は一人しかいないでしょう?』 「・・・・・」 やっぱり、彰弥くんはそう言ってくれると思った。 きっと・・・私が悲しめば帰ってきて一緒にいてくれる。 ずっと傍にいて、隣りで笑ってくれる。 それが、私にとって一番幸せで・・・一番残酷なことだと・・・きっと気付かない。 「・・・彰弥くんが後ろに下がらなくてもいいんだよ・・? 彰弥くんが戻る必要は何ひとつないんだよ・・・。私が変わらないと、いけないから。だから、お願い・・・お願いだから・・・。 私と・・・っ-・・・」 私と彰弥くんがこの関係のままだと、きっと二人とも足踏み状態で終わってしまう。 私は、ともかく彰弥くんの夢が叶わなくなるかもしれない。 彰弥くんが学校を卒業して成功して、向こうで仕事をするとなったら、彰弥くんは・・・それを諦めてこっちに帰ってきてしまうかもしれない。 私がいるから・・・って、自分の夢を捨ててしまうかもしれない。 向こうで彼は受け入れられ始めているのに、それを私がいつか邪魔してしまう日が必ず来る。 君が隣りに帰って来て、私に笑いかけてくれる。 そして私はバカみたいに笑って、「幸せだね」なんて君に言える自信がない。 「・・・別れて・・・。お願い・・っ・・」 『・・蓮華・・・』 携帯から聞こえる声は、ひどく冷静に聞こえた。 そして一呼吸、彰弥くんが息を吸う音が聞こえて。 私は目蓋を思いっきりギュッと閉じて、彼の言葉を待った。 『・・・分かりました』 その言葉を聞いた瞬間、キツく閉じた目を開き、心臓は嫌なくらいざわついた。 「あ、りがとう・・・」 そう言葉を出すと、フッと頬に涙が流れるのを感じる。 これで・・・もう・・・-  
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