もう届かない過去

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シャワーを終えて、リビングに向かうと椿と義貴先輩がDVDを観ていた。 ・・・ちょっとちょっとー。まるで自分の家みたいに当たり前のように居るよ。最近よく遊びに来てるなぁ。 ソファでごろごろしようと思ってたから内心溜め息が出そうになったけど、グッと堪えて挨拶をした。 「こんにちは、義貴先輩」 部屋着で会うのももう慣れてしまったため、恥ずかしくもなんともない。 「あ?よっ!おそよう」 私の言葉に律儀に見ていたDVDを止め、こちらを振り返って挨拶をしてくれる。 あれ?今日はいつもより応対がいいぞ?なんで? 律儀な反応をあまり見たこと無いからか、少し嫌な予感がして早く自分の部屋に行こうとリビングのドアに一直線に向かった。 「待て。聞きたいことがあんだけど」 ドアノブを捻ろうとした時にそう言われ、思わず動きが止まってしまった。 「蓮華、ちょっとこっち来て」 何も言わない私を見兼ねてか、椿が私の方まで来て、腕を引いてきた。 そして2人の向かい側にあるソファに座らされる。 義貴先輩も椿も私の顔を見た瞬間、「おお・・・」と驚きの声を上げる。 そんな対応されたら、ちょっと恥ずかしいなぁ。変なモジモジ感に襲われ、下を向いていると、義貴先輩が口を開いた。 「・・・誰かにカツアゲでもされたか?」 「違いますよ」 真剣な顔の義貴先輩。 自分が想像していた質問とまったく違い、ちょっと噴き出してしまった。 私の冷静な切り返しに訝しげな顔をするから、「なんでそう思ったんですか?」と尋ねてみた。 まあ、この顔を見たらそう思ってもおかしくは無いのかもしれないけど。 義貴先輩の優しさはなんとなく伝わる。私の心配をしてくれてるのも分かる。 「いや普段よりも若干顔立ちが整ってたから、カツアゲされて顔修正されたのかと思って」 ちょっと優しいなぁとか良い人だなぁとか思った矢先がこれだ。 「なんでカツアゲなんですか!?殴られたとでも!?」 「え、そうだと思った。カツアゲされそうな顔してたじゃん」 私、今までどんな顔してたんだろう・・・。    
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