もう届かない過去

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一緒に旅館に行ったのは夏で、連絡を待っていた期間は三か月間。 別れを切り出してから、また一か月が経った。 あっという間に12月になって、外は寒くなって雪が積もって、私も雪が降るごとに気持ちが落ち着いてきて、今は人生を謳歌していると言っても過言じゃない。 毎日連絡を待っていたあの時間が懐かしい。 黒かった髪は、茶髪に変わって。 まっすぐだけど、少しくせっ毛だった髪は、ゆるいパーマをかけた。 お化粧だって、ほとんどしてなかったけど少しずつ練習して、アイメイクだって出来るようになった。 椿みたいに綺麗には見られないけど、前よりは少しずつ大人に近付いて来てるはず。 ヒール高いの今履いてるけど、こればかりは慣れない。 会社に行く時も、足痛くなるんだよなあ。 今も通勤途中で、無駄に働く前からヒールに労力を使っている・・・。 街を歩くと、カップルの方々が沢山いて・・・若いなぁなんて、ぼんやりお年寄りじみたことを考えてしまう。 雪が少し積もっている道を歩いてるんだけど、ヒール高いのを普段履いている人の気が知れないな・・・。 すごい辛い。 本で読んで、男の人はヒール高いの履いている女の人に魅力を感じるとか何とか書いてあったけど・・・こんな大変な思いして履いてるって分かって欲しいよ。 一回自分で履いてみたらいいんだよ。 あ、でも・・・ 『なんでこんな靴履いてきたんですか?』 前、履きなれてないヒールが高いパンプスを履いて・・・靴擦れになって・・・心配かけたなぁ・・・。 《・・・なんとなく。ヒール嫌いだけど履いてみた》 彰弥くんに少しでも可愛く思われたくて、痛くてもずっと履いていて・・・それに彰弥くんが気付いて・・・怒られた。 『・・・蓮華が辛い顔するの見てるのが一番許せないんですから。もう無理にヒール履かないでください。お願いします』 《彰弥くんはヒール高いの履いてる子好きじゃないの?》 『俺は無い方がいいと思いますよ』 《なんで?》 『好きで履くなら無理は言いませんけど、慣れてないで履くのは心配です。それに蓮華は履かない方が可愛いですよ』 《・・・・ありがとう》 絶対お世辞だったと思うけど・・・嬉しかった。 彰弥くんは、履かなくていいって言ってくれて・・・私はアレ以来履かなかった。 あの笑った顔は、もう見れないけれど。
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