もう届かない過去

6/19
前へ
/430ページ
次へ
-侑弥side- それはある日のことだった。 大学の飲み会で一次会が終わり、居酒屋を出た時のことだ。 「霧山くん、二次会も行くよね~?」 同じ講義を受けている女子が、俺の腕を遠慮なく触ってきやがる。酔ってるからって馴れ馴れしくないか? あんまり酒を飲まなかった俺は、その子のテンションに引きながらも、「ああ、行く」と短く返事をした。 「やったぁ!」 「ちょっと!霧山くんに近付かないでよ!」 「え?ごめん。ちょっと飲みすぎちゃったからさー」 あからさまにワザとらしくくっついてくる女子が二人。 うるさいな。 「お!侑弥、いいなぁ」 他の男どもは、そんな俺を見て赤ら顔でにやにや笑ってるし。こうなるんだったら、もっと飲んでおけば良かったな。 外はもう暗くて、時計を見ると夜中の11時だ。くっそ、眠くなってきたな・・・。 二次会はカラオケみたいだし、そこで仮眠するか。 「ねえねえ、霧山くんはどんな子が~」 「霧山くんって~」 両隣にいる女子の言葉を聞き流し、早く店につかねーかな・・・なんて考えながら辺りを見ていると、ちょうど小さい居酒屋から出てきた人が目に入った。 「え?」 その目に入った人物は、フラフラになりながら一人で歩いている。 絶対にこんな時間に一人で居酒屋には入っていけないであろう人物が・・・。 寝ぼけてんのかな、俺。 少し目を擦ってみたが、俺が予想している人物にソイツはぴったり当てはまっている。けど、一人でいるって・・・。 んー、わかんねぇ!とりあえず声かけてみっか!人違いだったら、謝ればいいんだし。 「わりぃ!俺、用事できたから抜けるわ」 両隣の女子のひっついている手を無理矢理自分の腕から引き剥がし、幹事の奴に声をかける。 「まじか。お前いないと女子が・・」 「じゃあな!」 最後の幹事の言葉は聞いてないことにしておいた。 んなの言われたら、また面倒くさいしな。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加