もう届かない過去

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さっき見た人物に走って、近付いていくけど・・・パッと見て判断するってちょっと無理があったか? あれ・・・暗くてよく見えなかったけど・・・髪・・・茶色じゃん。 しかもパーマまいてる?あれ?じゃあ、別人か? でも、チラリと見えた横顔は確かに・・・。 今更そんなこと思いながら、目の前まで近付いた人物の腕を掴んだ。 「あの」 遠慮がちに声をかけると、手を掴んだ相手はこちらを振り向いた。 「はい?」 そして、振り向いた奴の顔を見て・・・小さく溜め息を漏らした。 やっぱり。 「一人で何やってんだ、蓮華」 顔を見ただけで分かる。 こいつ、なんかあったな。 「あ、侑弥くん!久し振りだね」 蓮華はとっても嬉しそうに笑った。 その表情は、確かに喜んでる顔をしているのに・・・どことなく悲しさを感じた。 へらっと馬鹿みたいに高校生の時のような笑みをみせているのに、何かに違和感を感じる。 「ん、そうだな。つーかお前、全然連絡してこねぇんだもん」 「あ、ごめんごめん。色々あってさ。でも、やっと落ち着いてきたんだよね」 「ふーん。で、こんなところでなにやってんだ?」 「だいぶ落ち着いたから、一人で居酒屋で飲んでみようかなって新たな試みをしていたんだよ」 自慢げに胸を張って笑う蓮華に、少し笑みが漏れる。 「ろくに飲めないのに?」 「うん!何事にもチャレンジが大切だと思って」 「へー」 こいつ、こんなにチャレンジ精神あったけか? 昔から一人で行動するのは嫌そうな奴に見えたんだけどな。 「侑弥くんは、なにしてるの?」 「俺は、大学の友達と飲み会あって。で、今終わったところ」 ま、抜けてきたんだけど。 「そうなんだ。いいね、若いね」 「お前も同い年だろ」 「ああ、そうだね!」 そう言って、蓮華は一人でくすくすと笑った。 ・・・大丈夫か、これ。結構酔ってるんじゃねぇか? 蓮華はひとしきり馬鹿みたいに笑った後、空を見上げ「月が青いね」と訳のわからないことを言い出した。 「もう帰ろうかな。じゃあね」 「え?おい、ちょっと待て」 変な発言をした後に帰ろうとするから、慌てて手を掴む。 「え?どうしたの」 「どうしたの?じゃねえよ!お前、一人で帰ろうとしてんのか!?」 俺のその言葉に、蓮華は間抜け顔で一言。 「うん」  
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