2795人が本棚に入れています
本棚に追加
あまり大した話はせず、他愛無い話を繰り返して、蓮華の家の前まで来た。
聞きたいことはあったし気になることもあったけど、蓮華からくだらない話を振って、俺に何かを隠すように接してくる。
あやしすぎるけど、ここでなんか言ってもなぁ。
「じゃあ、送ってくれてありがとう!1人で帰れる?」
家の前でヘラッと笑って言う蓮華に、「バカにしてんのか」と軽く頭を叩いた。
「冗談だよ。でも夜道は危ないから気をつけて帰ってね」
さっき1人で帰ろうとした奴が言う言葉じゃねぇだろ。
まあ、コイツらしいか。
「じゃあな」
「あ・・・あ・・・」
背を向けて立ち去ろうとすると、後ろから戸惑ったような声が聞こえて振り向いた。
振り向くと、何かを言うのを戸惑っているように眉を歪めている蓮華。
具合が悪いのか?
「どした?」
少し不安になりながら蓮華が立っている所まで戻る。
「まさか、飲み過ぎか?具合悪いなら早く家入った方が・・・」
「お願いがあるんだけど」
俺の声を遮って、深刻な声色で話す蓮華に少し身じろぎをした。
「改まってなんだよ」
言いにくそうに口を動かす蓮華。
「彰弥くんには、私に会ったこと言わないで欲しいんだ」
「・・・・ああ、うん。分かった」
二言返事でそう言い、蓮華を家に促して、帰り道を歩いた。
・・・あの言い方は・・・何だか気になる。
本当は言って欲しい、と思わせるような雰囲気だった。
「うう、さみぃ」
冬の風が頬を掠める中、ずっと蓮華の言葉だけが頭の中に反芻していた。
最初のコメントを投稿しよう!