もう届かない過去

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以前見た時と違う蓮華の様子。かなり・・・違和感があったよな・・・? あいつ、化粧なんて全然するような奴じゃないし、服装だって・・・俺のクラスの奴らみたいな・・・。 さっきの蓮華を思い出せば出すほど、嫌なことしか浮かばなくなってくる。 「いや、違うな。ありえないな・・・」 ぶつぶつとソファに座りながら必死に自分の考えを否定していると、メイドたちが「どうかなされましたか?」と心配そうに首を傾けていた。 「あ、いや・・・」 違うよな、無いよな。 「あ、もしかして侑弥様!お付き合いされている方もそうなのかと不安に思ってらっしゃるんですか?」 1人のメイドがいいところをついたとでも言いたげにニヤニヤ笑っている。 「はぁ?ちげーよ。・・・付き合ってる奴なんかいねぇし」 否定したのはいいけど、何故だか恥ずかしくなって最後の方はかなり小声で言い返した。 「もう!隠さなくてもよろしいんですよ」 「そうですよ!彼女のことが心配なら、自分の目で確かめないと!逃げられますよ」 おばさんメイドたちは楽しそうに俺の話で盛り上がり始めた。しかも、あることないこと・・・。悲しいことに大半は無いことだ。 「侑弥様!男は度胸です!気持ちで負けたら駄目ですよ! 彼女のこと、大切に想っていらっしゃるなら、びしっと決めないと」 何故か肩をポンポンと叩かれ、力を合わせて応援するよー!的な雰囲気で話は終わった。 従業員の休憩所を出て、自分の部屋に入ったけど・・・ あの番組を見てからどうしても蓮華の様子が引っかかる。 「・・・誘ってみるか」 携帯の画面を見つめ、小さく溜め息を吐いた。 視線の先には、蓮華の電話番号が映し出されていた。  
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