もう届かない過去

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どうするか。 今日は従業員みんな休みにしちまって、迎え来れねーんだよな。 タクシー拾うしかないか。 「ここ、座って待ってろ」 苦しそうに眉間を歪ませる蓮華をゆっくりベンチに腰掛けさせ、少し通りが多い道に出た。 運よくタクシーが通り、つかまえることができた。 蓮華をゆっくりとタクシーまで連れて行き、乗り込む。 「どちらまで行かれますか?」 運転手に聞かれ、迷った。 「えっと・・・」 慌てて自分の家の住所を教え、そこに早く行ってもらえるように頼む。 乗っている間にも蓮華は苦しそうで、俺は肩を貸して背中を撫でてやることしか出来なかった。 荒い息でたまに「うっ・・・」と詰まったような音が聞こえる。 ・・・本当、大丈夫か・・・・。 「お客さん」 「はい?」 タクシーの運転手が俺の家に向かっている途中で、声をかけてきた。 「あの、お家で大丈夫なんですか?もしあれでしたら、産婦人科とかに行ったほうがいいんじゃ・・・」 「え・・・?」 運転手の言葉に、俺の頭は一瞬フリーズする。 え・・・おい、もしかして・・・これ・・・。    
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