もう届かない過去

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「私、高校生のころから全然成長してないから。みんなは、自分のやりたいことやったり昔から叶えたかった夢を追ったりしてるけど、私には・・・そういうの何もないから・・・。私も・・・何かに挑戦したりしたくて」 伏し目がちにそういう蓮華に、俺は頭をガリガリと苛立っているのかというくらいに掻いた。 なんでそんなこと急に思ったりするんだよ。 別に誰にどう言われたか分からねーけど、普通に暮らしててそう思うことって滅多にないだろ。 「なんでそんなこと急に思うんだよ?お前には彰弥だっているし、無理に変わんなくていいんじゃねえの?」 そう言うと、蓮華はゆっくり首を左右に振って、溜め息を吐いた。 そして、少し間をあけて 「彰弥くんとは別れたよ」 ハッキリとした口調で言った。 「は?」 それを聞いた瞬間、俺の頭の中は一瞬真っ白になったけど、すぐに我を取り戻して蓮華をまっすぐ見た。 「彰弥から・・・?」 「・・・私から」 その蓮華の言葉で更に頭が痛くなりそうだった。 何を考えているのか・・・。 「なんで?」 「・・・・・・彰弥くんはもう・・・違うから」 泣きそうなか細い声で蓮華は言うけど、俺は声を優しくする気にはならなかった。 「何が?」 蓮華の考えることは分かってきたつもりだった。でも、今回ばかりはまったく分からない。 「わ、私は昔のままだけど・・・彰弥くんは違う。どんどん先に行って、一緒にいた彰弥くんじゃないから・・・。変わってきてる。私だけ、変われないまま・・・成長しないまま・・・。 それが、辛いんだ。会った時に、苦しくて・・・辛い」 目を潤ませて、涙を堪えているのか眉を歪めている。 その姿を見たら、蓮華も考えたには考えたんだろうなということが伝わってきた。 だけど。 「お前は、変わんなくていいんだよ」 少し、ずれてる気がする。  
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