もう届かない過去

17/19
前へ
/430ページ
次へ
蓮華が俺を見て「でも、私は・・・変わらないと・・・」とそこまで言って嗚咽をもらした。 「彰弥に変われって言われたわけじゃないんだろ?」 「言われてない・・・。でも、私は離れてる間ずっと彰弥くんのことばかり考えてた。・・・彰弥くんも同じだろうと思っていたけど、そんなことなかった。自分のやりたいことを一生懸命やっていて、頑張ってた。 だから、私も・・・そうなりたかったんだ・・・。 それに、このまま彰弥くんが向こうで上手くいったら、私は・・・お荷物になる・・・。だから、そうなる前に・・・私から・・・離れないと・・・」 手の甲で必死に涙を拭ってる姿に、俺もつられそうになってしまった。 だ、ダメだ。俺が揺れてどうする。 「彰弥にはそれ言ったのか?」 俺の言葉に蓮華は小さく首を振った。 「なんで言わないんだよ。言ったら彰弥も考えて・・・」 「考えられるのが嫌だったから。私のことで・・・そんな彰弥くんには余計なこと考えて欲しくない・・・」 ああ、そうか。彰弥のことも考えて、自分から・・・。 少し不憫にも感じるけど、俺からしたら納得できなかった。 好きなのに、自分の首を自分で絞めてどうするんだ。 変われてるように見えて、退化してるようにしか見えなかった。 「お前の気持ちは分かった。彰弥と離れたことが蓮華にとって最善ならそれはいい。だけど、無理に変わろうとするな」 蓮華が無理に自分を偽っても、いいことはない。 むしろ、傷を抉っているようにしか・・・。 「なんで?それじゃあ・・・」 それじゃあ、私はダメなんだと言いたげに言葉を止めて、俺を見た。 「無理に変わったって、結局根本は変わってないんだよ。いつまで経っても変化がないままだ。だから、お前は今の自分を大切にしろ。 そしたら、変わる時がいつか来るんじゃないのか」 今のままだと、ぼろぼろになって終わりだ。 蓮華は少し何も話さず、下を向いて固まっていた。 俺の言葉を芯から受け止めてくれてるみたいだ。 何かに納得したのか、目元をごしごしと擦って「わかった」と一言。 「本当にか?」 「・・・うん。たぶん」 多分って、おい。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加