もう届かない過去

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それからは家で少し蓮華とくだらない話をしたり、久し振りにゲームをしたりした。 久し振りに沢山笑って、楽しかった。 蓮華の対戦ゲームの弱さぶりにも腹抱えて笑った。 時間は刻々と過ぎていって、「もう帰る」と言うから、夜道は危ないし送っていくことにした。 外に出ると、笑い過ぎて火照った頬には夜風の冷たさが心地よかった。 とりあえず今日蓮華と会って良かった。嫌な不安が心を過ったけど・・・結局蓮華は浮気してなかったし。 そう考えて、思考が固まった。 あ、れ・・・。そういえば浮気ではないけど、もっと悪い現状になってないか・・・? 別れたんだもんな・・・。 そう改めて考えると、俺は何をホッとしていたんだと遅かれながら自分の頭を叩きたくなった。 「な、なあ!」 焦って横を歩いている蓮華に声をかけると、「え?なに?」ときょとんとした顔でこちらを見た。 なに?じゃねーんだよ!なにじゃ! 声はかけたはいいけど、なんて言っていいか分からなくて、必死に軽く聞こうと言葉を羅列した。 「お、お前に会おうって連絡しただろ?あの時さ、本当は蓮華が浮気してんじゃないかと」 そこまで言って、ハッとした。 ・・・俺はなんて屑みたいな発言を・・・!! 自分の言ったことに猛烈に後悔していると、蓮華はあまり気にしてないみたいに笑った。 「するわけないよー、そんなこと」 眉を八の字にして笑う蓮華は、やっぱり悲しそうだった。 「そうだよな!悪い悪い!」 あはは、と軽く謝ってみせるけど・・・自分を心底殴りたい感情に駆られていた。 蓮華はそんな俺を見て、視線を上に向けた。蓮華の見る先には、夜空が映っている。 「いつか、彰弥くんに会って《ありがとう》って伝えられるといいな」 「そうだな」 蓮華の横顔を見やり、俺も空を見上げた。 今日はいつもより綺麗な星空だった。
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