友達だから

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……連絡先? ああ、そういえば聞かれたかもしれない。最近何故かバス停や帰り道に聞かれることが増えて、なんでなんだろうってずっと思っていた。 「そういえば聞かれたね。でも、断ったよ」 「ま、彰弥くんがいるものね。最近全然連絡取ってないように見えるけど、どうなの? 上手くいってる?」 椿が柔らかい笑みで、私が寝転がっている横に座る。ベッドがギシッと静かに揺れるのを感じて、そういえばまだ椿には言ってなかったんだ……と思い出した。 でも……昔とはいえ椿が好きだった人。……別れたなんて言いづらい。好きだったのも過去のことだと、あっさり流してくれるのかな。それとも、なんてことをしたのって怒られるのかな。 椿の顔をジーッと見つめながら、ゆっくりと口を開いた。 「……別れたんだ」 小さな声で言ったけど、音楽もかかっていない部屋には大きく響いた。こんなに響くわけはないのに、大きな鐘が鳴っているかのように私の頭の中に何度も響く。まるで自分に言い聞かせているみたいに、呪文のように鳴り響くのが気持ち悪い気がする……。 椿は何回か目を瞬かせて「そう」と、思ったよりもあっさりと言葉を返してくれた。 「……それだけ、なの?」 あまりにも短い言葉に、私の方が驚いてしまって……つい口から出てきてしまった。 椿のことだから【ああ、勿体ない】とか【彰弥くんみたいな人なかなかいないのに】とか【本当にいいの?】って言ってくると思った。大きな声で驚いて怒られるのかとばかり思っていたのに、明日のお昼は蕎麦だからと言われた時のような反応で終わってしまうなんて。
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