友達だから

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「それだけなのって……他に何か言って欲しいの?」 呆れたように溜め息をされ、慌てて「そんなことはないけど」と返事をした。 「ただ、もっと何か……反応あるかと思って」 「椿にはね、義貴くんがいるから。彰弥くんは前に好きだった人だもの。別に蓮華に怒ったりしないわ」 「そ、そうなんだ」 「お互いが決めたことなんでしょう? なら、いいじゃない。向こうで彰弥くんは新しい彼女が出来るだろうし、蓮華も連絡先とか聞かれてるんだから、すぐに新しい恋出来るわよ」 椿が大人みたいなことを言うから、驚いた。この数年間で、考えることさえも大人になっていったんだ。椿は、ちゃんと過去を振り切れる人なんだ。前に好きな人だったからと、しっかり終わらしている。 終わらして、義貴先輩のことだけ見ているんだ。 椿の言葉に何も言えずにいると、「大丈夫よ、すぐお互い良い相手が見つかるわ」と微笑まれた。綺麗な笑みを呆然と見つめてしまう。 ……私が何を思っているのか、椿に分かるはずがない。だって、私にでさえ分からないのだから。 どんどん自分の瞳の奥が青くなっていくような、感度はないのに……冷たくなっていくようなそんな気がした。 何も言わない私に「いい加減に振り切ることも大切よね。こうやって成長していくのよ」と随分大人びたことを言う椿。 同い年なのに、いつの間にこうなってしまったんだろう。容姿も性格も違うけど、考えも成長の仕方も全然違うんだなぁ。 ぼうっとそう思いながら、「そうだね」と感情のない声が出た。 きっと私も変わるんだろうか……変われるんだろうか……。 身体を仰向けにすると、真っ白い天井が目に入る。 その白い天井には、ぼんやりと誰かの影が浮かぶのだ。 いつか私と出会う誰かなのか、それとも今……会いたい誰かなのか……。 確かめなくても分かるのに……。
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