友達だから

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数日後。仕事帰りの夕方は辛い。 最近暴飲暴食で太ったなと体重計に乗らなくても分かるほど実感していたから、今日は会社から歩いて家まで帰ろうと思ったけど、無理があった。 スニーカーなら、まだこんなに辛くは無いだろう。けど、今日はよりによってパンプスを履いてきてしまった。 「うう、痛い……」 最悪だよ……、こんな歩きづらい靴でよく帰ろうと思ったなぁ。 足がガクガクだし、踵とつま先が痛いし……。 もうギブアップしてバスに乗ろう……。そうしよう。 よく家まで帰ろうと思ったよ……、本当。 しかもこのパンプス、サイズ少し大きいからカパカパするんだよね……。足が成長して丁度良いサイズになると思ったけど、そう簡単に成長しないよね。無計画って、こういうことを言うのかなぁ。 落胆しながらバス停に並びつくと、4、5人並んでいた。バスの時間を確認すると、運よくすぐ来るみたいだし、ラッキー。あまり長く待たなくて済むみたい……。 安心してホッと息を吐くと、タイミングよくバスが到着した。 一番前に並んでいるのは学生で、並んでいる順にバスに乗り込む。私も普通に乗り込もうと足を上げると、カパカパだったパンプスが見事に……片足から落ちる。 カンッと何故かいい音を立て、コンクリートの上に……。 階段に片足を乗せ、片足は足を上げたままだ。 ほんの数秒の出来事なのに、恥ずかしい出来事は長く感じるとはこのことなんだな、とそんなこと思う余裕もないのに悠長に思った。 この状態で足をつけるのは汚いことなのかな? でも一瞬で取れば、周りからもそんなに汚いと思われずに済むかな? 落ちたパンプスを見つめていると、視界に人の手が入る。 その手は私のパンプスを拾い、上がっている片足に履かせてくれた。 視線を自分の足からその手の人物に移すと、大学生くらいの青年が笑っていた。
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